一夜明けて

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ゆっくりと死神は、吹き飛ばした男へと、歩み寄る。 男は吹き飛ばされた時に、剣を手から離しており、もはや反撃出来るような状態で無い。 「ここまでか……」 ゆっくりと近づいてくる死の足音を、確かに感じながら、男は覚悟の一言を呟く。 「良い覚悟だ。なるべく苦しませずに、殺してやる」 思惟が身が鎌を振り上げた、その時であった。 「やめて! お兄ちゃんを殺さないで!」 少女の悲鳴に似た叫び声が、響き渡る。 そして、一人の少女が男を庇うようにして、死神の前に立ちはだかった。 「シーナ! 隠れて居ろと言っただろう!」 男の表情が絶望の色から、焦りへと変わる。 「お兄ちゃんを見殺しになんて出来ない!」 恐怖に震えている少女は、背後にいる兄に向って叫ぶ。 普段の死神ならば、この瞬間に何の躊躇いも無く、その手にある鎌を振り下ろしている事だろう。 だがしかし、今日の死神はそれが出来なかった。 幼い日の記憶が目の前をよぎったのだ。 目の前の少女の姿が、自分をかばって殺された妹の面影に、重なったのだ。 「リー……ス……?」 死神は鎌を振り下ろす事無く呟く。
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