ヒーロー見参?!

6/8
前へ
/38ページ
次へ
次いで、そのタマゴンに飛び蹴りをかましたらしい謎の人物の影――さっきの声の主、だろうか。 シルエットからして、それは男性の様だ。 彼が着地する。 …助かった、のだろうか。この人物のおかげで。 李花は頭の端で、「ピンチの時に駆けつけてくれる正義の味方」を思った。 取り敢えずお礼を言うべきだろう。そう思い、李花が彼に近寄る。 …が。 「ご、ごごごごめんなさい!!すみません!!!」 正義の味方は、いきなりぺこぺこと倒れたタマゴンに向かって頭を下げだした。 李花は目を丸くする。 …何処の世界に、敵に謝る正義の味方がいるんだ? 「あの…ちょっと?」 声をかける李花。 それにビクッと肩を震わせると、彼は恐る恐る振り返った。 彼の顔を正面から見た李花は、思わず「あ」と口が開いてしまう。 黒縁眼鏡。身長は高いが、それに反比例な童顔。 黒髪で、気の弱そうな目。 いかにも大人しそうな少年、といった感じのその風貌。 見覚えがあった。 「…朱島敬矢」 一回しか学校に姿を見せた事のない変わり者。 ポツリと呟いたその名前に、誰より彼自身がビビッたらしい。 「な…な、何で僕の名前を…っ」 「…イヤ、私アンタと同じクラスなんだけど。入学式の時、一回見たから」 「え…えぇ?お、同じクラスって…」 今にも泣き出しそうだ。 見た目と中身、一緒だな…と李花は彼をまじまじと見つめた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加