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次いで、そのタマゴンに飛び蹴りをかましたらしい謎の人物の影――さっきの声の主、だろうか。
シルエットからして、それは男性の様だ。
彼が着地する。
…助かった、のだろうか。この人物のおかげで。
李花は頭の端で、「ピンチの時に駆けつけてくれる正義の味方」を思った。
取り敢えずお礼を言うべきだろう。そう思い、李花が彼に近寄る。
…が。
「ご、ごごごごめんなさい!!すみません!!!」
正義の味方は、いきなりぺこぺこと倒れたタマゴンに向かって頭を下げだした。
李花は目を丸くする。
…何処の世界に、敵に謝る正義の味方がいるんだ?
「あの…ちょっと?」
声をかける李花。
それにビクッと肩を震わせると、彼は恐る恐る振り返った。
彼の顔を正面から見た李花は、思わず「あ」と口が開いてしまう。
黒縁眼鏡。身長は高いが、それに反比例な童顔。
黒髪で、気の弱そうな目。
いかにも大人しそうな少年、といった感じのその風貌。
見覚えがあった。
「…朱島敬矢」
一回しか学校に姿を見せた事のない変わり者。
ポツリと呟いたその名前に、誰より彼自身がビビッたらしい。
「な…な、何で僕の名前を…っ」
「…イヤ、私アンタと同じクラスなんだけど。入学式の時、一回見たから」
「え…えぇ?お、同じクラスって…」
今にも泣き出しそうだ。
見た目と中身、一緒だな…と李花は彼をまじまじと見つめた。
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