白羽 李花の憂鬱。

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白羽 李花の憂鬱。

春の日差しは、とかく人のやる気を奪う。 事実、友人達と会話中であるにも拘らず――公立常和(ジョウワ)高校2年A組・白羽 李花(シラハ リカ)は、これ以上ない程強力な睡魔に襲われていた。 「り、李花…聞いてんの?」 返事がない事を心配した友人が、李花の顔を覗き込む。 …め、目に生気がない! こりゃ駄目だと言わんばかりに、友人達は総動員で彼女を起こしにかかった。ある者は大声で呼びかけ、またある者は肩を掴んで揺すり。 ……しかし、全く覚醒する気配がない…。 「李花ぁ~…」 些か友人達も疲れが見えてきた数十回目の呼びかけ。 と、此処でようやく李花の目にうすーーーーく光が戻った。 「…あぁ?」 第一声。思いっきり不機嫌な声である。 人の話の途中に船漕いどいてコイツ…!!と友人達は一斉に思ったとか。 「何スか、気持ちよく寝てたのに…」 「何その偉そうな態度?!」 「あー…いい天気ー…」 …聞いちゃいない。 李花は軽く伸びをすると、面倒そうに友人達に向き直った。 その動作を目で追い、思わずドキッとするクラスの男子面々――まぁ、それは仕方ないだろう。 何せ李花は、稀に見る程の美少女さんなのだから。 セミロングのサラサラした茶髪、二重で切れ長の目、色白な肌…と書き連ねていけばキリがない程容姿が整っており、運動神経は抜群。成績もいい。 ただ1つ、神が彼女に与えなかったとすればそれは――女らしさ。 今も足を組んでドッカリ椅子に座り、158cmと決して背の高い方ではないが友人達を見下ろす目つきで黙っている。 何というふてぶてしさだろう。 「そ、そーいえば李花…アンタこの前、田上くんに告白されてたじゃん?」 「……田上ぇ?」 「ホラ、あのバスケ部のさー…」 「あー…アレ。断った」 「えーーーッ?!!」 何で?!と騒ぎ出す友人達。
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