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川原に寝転ぶと、視界一杯に青が広がった。
いいなぁ、と李花は思う。
こうやって自由な時間を満喫するのは大好きだ。一昔前の田舎暮らしならば、もっとノンビリした生活がおくれたかもしれない…といつも考えている。
しかし、此処は現代の東京。更に自分は学生である。割と、自由が利かない事の方が多い。
時々視界の中に、空を飛ぶ小鳥達が入ってくる。それらをボンヤリと眺めながら、李花は一人の男子生徒を思い浮かべた。
朱島 敬矢。
彼の顔は、恐らく誰もロクに知らないのではないだろうか。
何故なら彼は、この2年間全く学校に来ていない。
それなのに教師陣は何も言わず、その上進級まで出来ていたりして…こんなのでは、生徒達に噂にするなと言う方が無理だ。
しかし教師はやたらと固く口を噤み、結局生徒達は首を傾げるしかなく。
中学が同じだった奴もいないという事で、ますますその謎は深まり――顔が解らないから、特に。
が、李花は彼の顔を覚えていた。
入学式、一度だけ姿を見せた彼の姿を。
背がヒョロッと高く、黒髪で気の弱そうな顔。確か、黒縁の眼鏡をかけていたと思う。
気が弱いのかやたらと小さく縮こまっていて――だからか、印象に残っていた。
全く不真面目そうには見えなかったが、一体どういう訳で学校に来ていないのだろう?
1年の時から同じクラスであっただけに、彼は李花にとって唯一気になる存在であった。
「僕がレッドやるーっ」
「あ、じゃあ俺怪人の役やるから!!」
何だか元気のいい声がする。
起き上がってみると、小学校低学年くらいの男の子達だった。
コイツらもさてはサボりか?こんな小さい内から…李花は感心した様子で見つめる。
で、何となく声をかけた。
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