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よく晴れていて、草の上は心地よい。
群生したクローバーの上に腰を下ろすと、お弁当を取り出し膝の上に乗せた。
李花は7歳上の兄と2人暮らしだ。
物心ついた時から既に両親はおらず、その兄と共に親切な従姉妹の家出育った。そして兄が義務教育を終えると共にその家を出て、兄妹2人で生活を始めた。
勿論、これでも結構色々な苦労をしてきた。
しかし兄も李花も、それを然程苦には思っていない。寧ろかなり自由でイイなぁと思っているくらいだ。
…まぁ、ただ1つ李花が苦に思う事と言えば、兄がかなり重度のシスコンという事で。
この弁当もまた、そんな兄が妹可愛さに毎日早起きして作っているもの。
そろそろ食べるとしよう、そう思った李花が弁当を開けたその時!!
「………んっ?」
川の中に、何か見えた。
灰色の丸っこい、何かの頭みたいなモノが…生物、だろうか。こっちに向かってくる。
……何やら、微妙に懐かしいシルエットだ……?
丸く愛らしい瞳。灰色のツルッとした身体。ピンピン跳ねたヒゲ。
そう…2000年代初期、東京の多摩川に現れ人々を騒がせたあの人気者!!!
「たっ…タマちゃんッ?!!!」
おいおい何年前の話だよタマちゃんて!!しかも此処、多摩川じゃないし!!有り得ねぇ!!
李花の頭の中を、様々なツッコミが駆け巡った。
だが、その間にもタマちゃん(?)は可愛さを振り撒きながらスーッと泳いでやってくる。着ぐるみじゃないよな…とじっく
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