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"人間の赤ん坊は、世話をしてもらわないと生きていけない。世話をして貰うには、愛されないといけない。故に子供というのは、愛される為に可愛いものとなる。"
そんな、当たり前の秩序がある。
子供が可愛い理由。
それを逆手に取ったのが、まだ若い夫婦。森羅の親である。
「シンラちゃん、こっちむいてー」
「シンラちゃん、次はこれね!」
「はい、カメラににっこりしてー」
森羅の幼少期の記憶は、真っ白スタジオと黒いカメラ。そして、沢山の洋服と大勢の大人たち。
売り込むために、通わされた、多くの習い事。ピアノにバレエ、日本舞踊・そろばん。まだあったような気がするけれど、残念ながら森羅の記憶には残っていない。
保育園にはあまり行かず、そこそこ売れる子役として、都会のスタジオまで出掛けていた。
友達がいた記憶はなく、故に遊んだ記憶もない。
たまに、弟と二人で、真っ白い壁や天井に囲まれた、同じく真っ白なベットに埋もれ、点滴を受けていた。
病弱だったこともあったが、跡継ぎとして、周りから大事にされている弟の横で、職業であったモデルとしての笑顔をずっと貼付けていた。
欲しいものは何でも買ってもらった。可愛い服も、綺麗にみせてくれるお化粧も、嫌いじゃなかった。
仕事をちゃんとすれば、褒めて貰えた。
一人で留守番もできたよ。
泣いたら怒られたから、ちゃんと笑ってたよ。
あたま、撫でて欲しかった。
手、繋いで欲しかった。
遊びたかった。
抱きしめて欲しかった。
それは、まだ"愛"を知らない森羅の願い。
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