黎明編

2/5
前へ
/24ページ
次へ
はじめから、歪んでいたように思う。どこか途中からかもしれないが、それでも酷く根元のほうから間違っていたように思う。 彼は酷く内向的で、コンプレックスの塊である。私立の進学校に中学校から入った彼は、見事に落ちこぼれた。学校で教師から、家では親から、駄目だ駄目だと言われ続けたことが、彼を内に内に閉じ込めていた。この時期に本だけは数多く読んだ。ミステリやSF、歴史物などの娯楽小説からヴィトゲンシュタインまで、活字なら片っ端から読んでいたように思う。片道一時間半の通学時間と、勉強時間として自室に閉じ込められた3時間を過ごすには本を読むくらいしかなかった。 こうして彼の頭の中には雑多な知識が詰め込まれていった。理屈っぽい性格はこの時に形成されたのだろう。 歪んだ土壌の上に、ある日種が蒔かれた。 彼は麻雀に出会った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加