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階段を登り店のドアを開けると、先程のセット雀荘とは異質な空間が彼の前に広がっていた。
狭い店内。ヤニで汚れた壁には『天和、大柴様』や、『静かに』といった貼り紙。卓は5卓だっただろうか。卓には坊主頭の青年と、初老の男性の二人だけ。当然、二人で麻雀をしている訳ではない。サイドテーブルにドンブリをおいて、サイコロを投げ合っていた。カゴに入れられた千円札の束が彼を少し不安にさせた。
ドアを開けたまま硬直した彼に、坊主頭が気づいた。店の奥に向かって『マスター!お客さん』と声をかけると、奥にあったベッドからむっくりと起き上がり・・ジャージ姿のオッサンがやってきた。なんだか達磨を連想させる風貌である。
『いらっしゃい』
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