序章『菩薩眼(ぼさつがん)』

2/5
前へ
/660ページ
次へ
遡(さかのぼ)ること平安の時代- 仏教が日本に伝来して以来、貴族たちの間に定着したのが、多くの民衆たちに信仰を広めようとする動きであった。   仏教や密教が様々な「形」となり、気合術や催眠術さらには医術や忍術などといったあらゆる術が浸透してきたこの頃、中国の易や方術や天文学と包括されて陰陽道が確立された。   神に仕える役職(神職)も設けられ、人々はさらに神がかりな力を求めていったのである…   ここに一人の女がいた。その名は葉子(ようこ)… この時代にそぐわぬ風貌は一見、遊女や娼婦と見違えるほどの美しさであり、見た目は三十路(実年齢不詳)…華やかな着物に黒帯を身に纏っている彼女は、艶やかな白肌をちらつかせ、きらびやかな芳香が漂っている。   その狐のような妖艶さからか、それとも不思議な魅力を持つ風貌からか、回りからは「妖狐(ようこ)」と呼ばれるようになっていた。 この彼女こそが、この作品の主役「闇狐女(やみきつね)」である。   彼女は朝廷から優遇されていた。 なぜなら葉子(妖狐)は龍脈を見切れる「菩薩眼(ぼさつがん)」の持ち主だからである。   また彼女の瞳は龍脈に限らず人の心も垣間見るという…
/660ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2017人が本棚に入れています
本棚に追加