序章『菩薩眼(ぼさつがん)』

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彼女は龍脈を見ることはおろか、龍穴(りゅうけつ)を見極めることが出来る。それが「菩薩眼」の宿命であった。 ※龍穴…龍脈のヘソにあたる処。「地の気」が特に流れ込み、強い気を発する場所をいう。   無限の明日を映し出し、遥か彼方を照らすその瞳… 闇よりの使いに閉ざされても、綺羅に輝く妖しい眼。 玉響(たまゆら)に消える水泡のように儚い物語を辿(たど)る運命ならば、譲れない未来(あす)のために、妖しい光に誘われ、艶やかな鋭い眼(きば)を剥く。   菩薩眼という星を宿した一人の女が、手繰り寄せる一つの道標(みちしるべ)。 孤独にかられた冷たい瞳孔(め)は、今宵何を見るのだろうか… すべては一通の書状から始まった…     「この治世も永きに渡るが…、近頃各地より気の乱れが報告されている。誰ぞ、龍脈の乱さんとする者が居るやも知れぬ。そこでお主に今一度、龍脈の道筋について見直しに出てもらいたい…」 朝廷の密書を手渡され、それを読みながら立ち尽くすこの女性こそが葉子(妖狐)である。   妖狐「なるほど…」 使者「確かにお渡ししましたぞ」 妖狐「えぇ…。わざわざご苦労様ですこと」 使者「では…これにて失礼致します」
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