序章『菩薩眼(ぼさつがん)』

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卍丸「おい!待て…。一人で行くのか?」 妖狐「えぇ…。その方が私に合ってるからねぇ」 卍丸「そうか、ならば引き止めまい。何かあったらいつでも呼んでくれ」 妖狐「それまで互いに生きていれば…ね」   妖狐は卍丸の方を振り返ることもなく、ふらりふらりと歩いて行った。   卍丸「まったく相変わらずだな…」 柴吉「卍丸殿」 卍丸「柴吉じゃねえか」 柴吉「姐(あね)さんは…?」 卍丸「あのとおり…。もう行ってしまった」 柴吉「はぁ…」   妖狐の後ろ姿を見届けながら立ち尽くしているこの柴吉(しばきち)もまた、同じ密書を受け取った一人である。 柴吉「姐さんらしいですな…」   卍丸「ま、そういうこった。…柴吉、お前も行くんだろ?」 柴吉「えぇ…」 卍丸「じゃ、先に俺も行ってるぜ」 柴吉「分かりました」 卍丸はその場から姿を消した。   柴吉「姐さん…。どうかご無事で…」 見守るように立ち尽くしていた柴吉も、その場から姿を消した。   こうして各々、奇っ怪なる旅路へとその足を踏み入れることとなる。 妖狐「さて…。まずは何処を訪ねてみようかしら…」 一人旅の山道で立ち止まり、空を見上げる妖狐の姿があった…
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