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「ねぇ、おじさん……」
おじ「なんだ、そんな浮かない顔をして……折角のドレスが台無しだろう?もっと笑ってみたらどうだ?」
舞踏会へ向かう馬車の中、マナは浮かない顔をしたまま自分の服を見詰めていた。
その理由は………
「これ、ちょっと派手じゃないかな……恥ずかしいんだもの///」
いつも着ている服装とは駆け離れた服装だからか、とても落ち着かない。
簡単に言えばマナはいつも楽な服装を好んで着ているから、正装なんて滅多にしない。
そんな彼女におじさんは首を傾げて不思議そうに答えてきた。
おじ「そうかい?とても似合ってると思うんだが……それに今日マナに会いたいと言ってくれている方がプレゼントしてくれた物なんだから着ないわけにはいかないだろう?」
「…そう、だよね;;;;」
ようやく諦めもつき、マナはため息をついて窓から見える景色を眺めた。
本当に、私に会いたいと言っている人って誰なんだろう?
プレゼントまで送ってくるなんて……
もしかしたらその人はおじさんの単なる知り合いではないのかもしれない。
おじ「やはり、マナは嫌だったかい?」
心配そうにおじさんはマナの頭を撫でながら訊ねる。
きっと私が浮かない顔をしていたから……
おじさんはいつも私の事を心配し、大切にしてくれる……
「大丈夫だよ、少し緊張してるだけ……今夜とても楽しみにしてるんだから。」
あまりにも優し過ぎるおじさんに気を使ってしまったのか、マナは気持ちを悟られないようにと笑顔を向けた。
そうすれば、おじさんは安心したように笑ってくれる。
おじ「そうか……なら安心したよ……無理をしないでおくれよ?」
「うん……わかってる。」
家族がなかった私に、少しばかりではあるが暖かい場所を与えてくれた人。
今の私にとって大切な人。
血は繋がってないけれど、私にとっては【父】だった…。
でも、それでも【愛】というものは理解できなかった。
里親に捨てられて愛情を知らない私……だから【愛】なんて脆いものだと思っていた。
そしてもう一つ、あの時私は運命も…
偶然を装った必然もそして……
自分の生きている道が決められていた事さえも……
何も知らなかったんだ……
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