392人が本棚に入れています
本棚に追加
そう思いながらマナは街の中を大きな紙袋を持ってさ迷っていた。
(何処か座る場所でもあればいいんだけどなぁ……)
時間も丁度お昼過ぎ……
何処かでゆっくり座ってリンゴを食べたい……
腹の虫が鳴るのを我慢しつつもマナは辺りをキョロキョロと見回した。
その時………────
「………あ」
思わず声が出てしまった。
その原因はただ1つ、マナの瞳に映ったもの。
それは………
男「………」
ぐぅぅぅぅ………
街の中心にあるベンチの上で長身の男が大の字で寝ていた。
しかも、腹の虫の音がここまで聞こえてくる。
(よっぽどお腹が空いてるのかな……;;;)
気が付けばかなり怪しまれているのか、誰も男に近寄ろうとしていない。
男「腹減った………;;;」
お腹の空腹感を紛らわしているのか、男はずっと煙草を加えたまま微動だにしない。
(餓死寸前……?)
不安は在りつつも、マナは息を呑んでそっと近付いてみる事にした。
そしてそっと声をかけてリンゴを差し出す。
「……あの、どうぞ食べて?」
男「……あ?」
差し出したリンゴと自分の顔を男は交互に見て呆然と固まる。
その間にも聞こえてくるのは男の虚しい程に響く腹の音……
ぐぅぅぅぅ………
「お腹……空いてるんでしょ?」
男「……いいのか?」
ずれ落ちる眼鏡を直しながらも訊ねる男にマナは優しく微笑んで頷いた。
.
最初のコメントを投稿しよう!