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ナナ「ポポー!ちーさん!…全く、どこに行っちゃったのかしら?」
暗闇の中、もう1人のアリスは独り、彷徨っていた。
どこを見ても闇、闇、闇!
出口なんてないんじゃないかと諦めたとき、ちらりと隣の視界を掠めるものがあった。
ナナ「あ…ポポ!」
アリスは安心して闇の中に立つ弟に走り寄った。手を伸ばし肩を掴む。
ナナ「…て、私じゃない。これは…鏡?なんで鏡なんかがここに」
掴んでいた"鏡の中のアリス"がゆっくりとこちらを見た。
体のあちらこちらから血を流し、自分は持っていないはずのナイフを持っている。
ナナ「なによこれ…!?」
アリスは思わず後ずさった。するとどんっ、と誰かにぶつかる。
ナナ「あ、すいませ…って、こっちにも私…!?あっちにも…そっちにも!!?なんなの??!」
そう、アリスは鏡に映る"もうひとりの自分"に囲まれていた。しかも大勢…!
左右上下、自分の踏みしめている地面にも…アリスが大量に横たわっていた。あるで死体。
その"もうひとりのアリス"は一斉ににやりと笑い、ナイフを構え口を開いた。
アリス?「あ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━、あ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━」
嫌に低い一定の声がアリスの頭内を支配する。きぃ…ん!と耳鳴りさえしてきた。
ナナ「痛い…!頭がイタイヨ…!!ぽぽ…!助けて…ちーさん!」
リンク『おやすみアリス、屍(しかばね)に埋もれて、安らかに』
"もう1人のアリス"、数十人が一斉にナイフを突きの構えで頭を抱えるアリスに襲いかかる。
ナナ「あ…あぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁ…ぁあ…ぽ…ぽ」
やっぱり、おかしな猫なんかについて行ってはいけないわ!
ポポ「ナナ…、ナナは?ナナが着いてきてないよチェシャ猫さん!」
リンク「あらら。はぐれたんですかね?あれだけ付いて来いと忠告していたのに」クス
女王の城の前にある、巨大な百合の花畑。真っ白なその中に2人は立っていた。扉から双子の片割れが出てくる気配はない。
嗚呼、空が真っ赤に染まって
もう夕暮れの時間ですか。
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