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次の日の 朝。
今日も退屈な毎日に変化が起きていて、チェシャ猫は寝床(木)から耳を澄ませた。
無音なこの世界に子守歌が流れている。旋律が流れている!
チェシャ猫はにやりと口元を歪めて、音の産み親を探しに寝床から飛び降りて走った。
その子はすぐに見つけられた。
近くにある聖なる湖の中央に浮き上がり歌い続ける人間。さざ波が揺れている。
青いドレス、広げられた右手の甲には"ダイヤ♦"が刻まれていた。
チェシャ猫は、喜びを抑えてその人間に近寄るために水の上を走っていく。
リンク「アリス!俺たちのアリス!歌なんか歌ってないで俺と遊びましょう?」
??「ん…、アリスって僕のことかい?生憎、僕にはマルスっていう名前があるんだけど…」
アリスは困ったようにチェシャ猫に答えた。
彼は、前のアリスよりは利口のようだ。
マルス「ごめんだけど可愛い猫さん。今、とても気分がいいんだ…。遊ぶのはまた今度」ニコッ
そう言ってアリスは、チェシャ猫が声を出す前にバイオリンを召喚した。
すうっ…と目を閉じて弦をバイオリンの線に滑らせる。
途端、あたりは不協和音に包まれアリスの歌声もそれに共鳴した。
思わず耳を疑ったチェシャ猫だったが、黙ってアリスを眺め続る。
嗚呼、なんて奇麗な旋律!
朝食を抜いたことも忘れてしまいそう。
お腹減ったな…。
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