Helloくりすます

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 ちゃんと魔法は掛けた筈だった。相手にも、俺にも。 だけど奴は目を見開いてこう言いやがった。 「Hello」 ふざけてる。神界では魔法の腕で右に出る者は居なかったのに……左なら居たが。 試しにもう一度眠りの呪文を唱えてみる。 寝ない…… 奴、ブロンドヘアの奇跡少女はまた話しかけてきた。 「ねぇ、貴方……サンタクロース? 何処から入って来たの? 暖炉? でも暖炉は火が付いているのにどうして入ってこれたの?」 呆れた。てっきり背も高く、髪も長いからてっきり14、5歳ぐらいかと思ったが……まだ年端もいかない幼女じゃないか。どうりで質問が多いワケだ……ってちがーーーーーっう!!!何でこいつは魔法が効かないんだどうしてこの醜い顔を見て驚かない普通女の子の部屋に知らない奴が居たら叫ぶなりなんなりするだろうどうしてこいつは……いかんいかん、俺は無駄に頭のいい脳で考えを整理してから奴の質問に答えた。 「一問目は正解、二問目は窓から。後の答えは暖炉から入って無いから答えようがない。ほかのサンタに聞け」 サンタは沢山居る。それこそ両手両足で数える事など出来ないぐらい居る。  今回はこの街のサンタが急病で倒れたから隣街担当の俺がこっちまで来てプレゼントを配っているだけの事だ。  つまり俺はこいつの事を知るはずがない。今日はこの子もたまたま眠りが浅かっただけだろう。この街のサンタもタイミング良く配るもんだ。  少女は俺が返事をした事に少々驚いていたがすぐに笑顔になった。 ……こいつ、なかなか肝っ玉が座ってやがる。 「ふーん、それで今年は何をくれるの?」  そう来たか。俺はその質問に素早く答えた。 「何が欲しい? 普段なら寝ている者の頭の中を見て、その者が一番欲している物を魔法で生成するのだが……」 少女は少し考えた後、俺にこう告げた。 「じゃあ、”猫 ”が欲しい!」
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