Helloくりすます

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Helloくりすます

「Hello」 そういえば彼女に会った時もそう呼ばれた気がする。  背は俺より高く、腰までのばしたブロンドヘアが落ち着いた雰囲気の女性。 思えばアイツが俺の姿を見て逃げなかった初めての”人間 ”かもしれない。  俺は、サンタクロースだ。そう、25日になったとたん、白い袋を担いで赤鼻の空飛ぶトナカイの引くソリに乗って街中の家に不法侵入して子供部屋に過剰装飾された箱を置いていく、赤い服を着たサンタクロースだ。  ただ、見た目は人間達が想像しているものとは大きく異なるだろう。 顔は継ぎ接ぎだらけで肌は灰色、鼻は全く無い。鼻の穴だけが口の上にチョコチョコッと付いているだけ。それに口は耳(鼻と同じで無い)まで裂けている。ギョロッとした目付きの悪い眼球。 赤いニット帽を被っていて、服は黒いパーカーに黒のジーンズ。子供の夢なんてお構い無しの格好だ。 俺を創り出した神様が言うには、 「子供達の気持ちを悟るにはどうしても大勢の魂を混ぜ合わせる必要があった。しかし、混ぜ合わせた魂達をつなぎ止めるにはどうしても針を入れなければならなかったのだ」 らしい。 その混ぜ合わされた魂の中でも男が多かったからか、人格は男になったらしい。 まぁ、俺も自分の姿形をどやかく言うつもりはない。なにせサンタは実体霊だから。  実体霊と言うのは神様が創り出した者の階級の一つ。位が高い順から神、守護霊、死神、精霊、実体霊、人間……と続く。まぁ要するに高い位ではないって事。 説明がとてつもなく長くなってしまったが俺が言いたいのは決して人間に好かれる様な外見じゃないって事だ。  そんな外見をしているので子供に見つからない様に細心の注意は払ってプレゼントを運んでいる。子供達に眠りの呪文(既に寝ているが)を掛け、自分にも透過の呪文を掛けて部屋に入る。もちろん親等にも気を付けて、だ。  存在している事自体奇跡に等しい俺が言うのもなんだが、奇跡って本当にあるんだな。まさか、魔法が効かない奴がいるなんて……
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