プロローグ

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そう言った銀二の言葉に、呆れながらも笑う。 めぐと呼ばれた少年の名前は、水野恵(みずのけい)。 彼の名前の恵が、めぐみとも読むことと、彼の中性的な顔付きから『めぐ』というあだ名がついたのだ。 「しっかしさ、銀兄ぃはそんなにサボってて良いの? 留年も三縦はマズいんじゃない? 同級生だった人達卒業しちゃうよ」 そう言って恵は苦笑した。 恵も銀二も、私立熊野学園高等部の一年だ。 だが恵は今年で16歳、銀二は18歳だ。 つまり、銀二は二度目の留年を経験している訳で、普通ならば崖っぷち。 銀兄ぃというあだ名も、同級生でありながら年上だというところから来ている。 しかし、二度目の留年となれば焦るべきだと思うのだが、銀二は余裕だ。 「だいじょぶだいじょぶ。何とかするからさ~。それに、ワイは出席日数足りてないだけなわけで?」 そう言って、銀二は恵を見る。 「留年生のくせに勉強出来るからムカつくんだよなぁ」 と、恵はため息と同時に文句をぶつける。 実際、銀二は頭が良い。 全学年一斉のテストでは、校内で二位という素晴らしい順位を取っている。ちなみに恵は大体真ん中ぐらいだ。 「まぁ、ワイもこのまま行けば普通に出席日数は足りとるし、卒業はめぐと一緒やから十分やん」 と、銀二はけらけらと笑った。 そこへ、少女の声が掛かる。銀二と恵の背中に冷や汗が落ちた。 「やっぱ銀兄ぃは当てになんないなぁ。連れ戻して来てって言ったのに一緒にサボってるし」 ゆっくりと、声のした方へ顔を向けると眼鏡と胸まで掛かる紫がかった黒髪が印象的な少女が呆れ顔で腕を組んで立っていた。 顔をひきつらせて笑う銀二。恵は少し怯えたような顔で言葉を紡いだ。
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