プロローグ

4/8
前へ
/27ページ
次へ
「ど、どうもゆこさん。今日はどう言ったご用件で……」 そう恵が聞くと、ゆことよばれた少女はわざとらしく顔に手を当てて口を開く。眉間にはしわが寄っている。 「あんまり遅いから私が連れ戻しに来たの。さっさと教室に戻るわよ」 そう言って、ゆこと呼ばれた少女はしょうもない二人組を一瞥。 恐る恐ると言った感じで、顔をまともに見ていなかった恵はゆっくりとゆこの顔へと視線を上げていく。 どうしても、短めのスカートから覗く素敵な太ももに目が行くが、あまりまじまじと見ても居られない。 観念して顔を上げれば、なぜだかゆこという少女は笑っていた。 「そう思ってたんだけど……、今日は良いや。めんどくさいし。学級委員長も今日はおやすみ~。三人で図書館で涼みましょ?」 そう言って、少女は満面の笑みを浮かべていた。 ****** 場所は変わって、熊野学園図書館。 熊野学園の図書館は広く、よく外部の人が研究資料を漁りに来ているのを見る。 だが、今日はたまたま居ないようで、さらに図書館の管理係の人も今の時間は居ない。 「わ~、スゴいね。三人だけの貸し切りだ」 そう言ってはしゃぐのは、ゆここと水野優羽(みずのゆう)。 彼女と恵は幼なじみであり、一つ屋根の下で過ごす姉弟のようなもので、恵と銀二のクラスメートであり、学級委員長だ。 他のクラスの男子のみならず女子にも有名で、容姿端麗、頭脳明晰、明朗快活。非の打ち所のない完璧な少女。 ただ、多少鈍感なところがあるらしく、身近な人間の気持ちには気づいていないようだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加