Ti Amo

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「谷中君、娘の彩織だ」 どうせまたお金の匂いがぷんぷんするおじさまか、と顔を上げると今まで嗅いだことのない甘い香りがした。 「初めまして、谷中慎一郎といいます」 私は一瞬で彼の優しくせつない瞳に心を奪われてしまった。 「こら、彩織、ご挨拶は・・・」 お父様の声が遠くに聞こえるくらい、私は一目で彼に堕ちてしまった 谷中さん・・・慎一郎さんは上海に越してきた青年実業家で、今日は引越しの挨拶に来たらしい。 「彩織さんは、鳥を飼っているとか」 低く優しい声でいきなり名前を呼ばれ、体がびくっと震えた。 「え、えぇ・・・20歳の誕生日にお父様がプレゼントしてくださったの」 「そうですか、それは優しいお父上だ。私も鳥は好きでね、子供の頃飼っていたんですよ」 「あぁ、谷中さん、それならよかったら見ていって下さい。この辺りではなかなか見れない熱帯地方の鳥なんですよ」 「ありがとうございます。では彩織さん、よろしいですか」 彼の視線がこちらを向く度、私の体は熱く火照っていった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加