見えないさくら。

🌸

かんちゃんは腰にタオルを巻いて、キッチンに入って行くと、冷蔵庫の扉を開けて缶ビールを一本取り出した。

「さくらは何飲む？」
あたしは、かんちゃんが振り向いてそう言ってくれるのを待ったけど、そうはならなかった。

かんちゃんは、またテレビを点けてその前に座った。
あたしもその前に座った。

「・・かんちゃん、おいしい？」
あたしの小さな声は、お笑い番組の笑い声に掻き消された。