1.年がら年中、元気! 天気! 勇気!

2/14
前へ
/112ページ
次へ
  ――……その壁は異様に高く、内と外の空間を完全に遮断していた。 けして越えることのできない壁に、ため息が漏れる。   外に出たい。 内に入りたい。   内にいる者は外の冒険に憧れ、外にいる者は内の安全に憧れた。 だが、結局、内にいる者が外に出れば内に戻りたがり、外にいる者が内に入れば、やはり再び外に出たがるものなのである。   だからこそ、壁はあった。   人は思う。 ここではない、どこかに行きたい、と。 どこでも良い、と思いながらも、今いる場所よりも好条件でなければ満足しない。 行き着いた場所が更にひどい場所だとは想像しないものである。 どこかに行けば、きっと幸せになれる。 そう信じている。 だが、そうとも限らないから、壁があるのだ。   ――壁。 それは、本当に壁かもしれない。しかし、壁ではないかもしれない。 一見、壁のようではないかもしれないし、目には見えない物かもしれない。 壁は、どこにでもある。 だが、どこにもない。 探して見つかるような物ではないが、ないと思って足を進めていると、ぶち当たるような物だ。 そのことを、誰もが知っているはずなのに、誰もが壁に気付かない……――    
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

341人が本棚に入れています
本棚に追加