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『桜月学園男子高等学校』
の門前を彷徨く小柄な少年。
髪は地味に染めたような焦げ茶でボサボサだ。
それに瓶底黒縁眼鏡までご丁寧に装着している。
変質者に見えるが一応この物語の主人公
桜月雪羽(オウヅキ セツハ)
否、
雛月雪羽(ヒナヅキ セツハ)は自分より遥かに高い門を見上げて硬直していた。
何故、こんな事になっているかと言えば…1週間前に遡る
…雪羽は、仕事の都合で丁度出掛けていた。
何時もは家で仕事をして会社の方へ送る。
理由は外見が小学生…童顔、
前髪にメッシュを入れていて不良にも見えるからだ。
実際高校生の年齢なので公の場には出ない方がいい為会議にも失礼ながらカメラで参加する。
しかし今回は密会で他社の社長達との雑談パーティーだったので仕方なく、
社長代理として参加したのだった…。
「おっかえり~雪羽ぁ~♪」
玄関を開けるとキャハッと笑いながら雪羽を出迎える……
可愛らしく聞こえるこの声は42歳になる父親から発せられた物であった。
雪羽は飛び付いて来たそれを軽く避けて冷たい目で見つめた。
「貴方が家に帰って来るなんて珍しいじゃないですか…?」
「〝貴方〟なんて他人行儀みたいでイヤだぁ~
パァパって呼んで?」
外見が外見なのでうっすら吐き気を覚える。
コレと同じ血が体内を流れていると考えるだけで
世界なんて滅べばいいと考えてしまう。
「気持ち悪いですよ?
…それより何の用ですか?
まさか…ッ!
また僕で遊ぼうと考えているの!?」
少し敬語が崩れたが、まだ優しい言葉遣いだ。
何匹でも猫を被る雪羽は父親の
〝思い付き〟とやらに毎度振り回されている。
また何かを思い付いたのだと察して身構える。
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