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はい…?と聞き返したくなる衝動を堪えてにっこりと笑う。
「ではどうして門に…?」
「只の散歩だ」
素っ気ない態度をとる英士、何様だよ。
「そうですか…
でしたら僕に近付かないで下さい
僕、貴方のような人に好意を抱けないので」
どちらかと言えば嫌いなタイプだ。
「……俺に好意を抱けない奴なんて居ない」
(…僕が居るっつの!)
話を聞かない自意識過剰な奴が
大の苦手な雪羽は顔をしかめながら英士を見た。
確かに美形…カッコイイのだが、性格が最悪だ。
「まぁお前みたいなオタクには好意を抱かれたくないがな」
ふふ…、と小さく笑い雪羽は笑みを崩さないで
見下したような眼差しで英士を見つめた。
「理事長が待っていらっしゃるので…
僕はこれで失礼します」
少しだけ頭をペコッと下げるて校舎がある筈の方向へと向かう。
英士が雪羽の気を引こうと何かを叫んでいたが
雪羽の耳には風の囁きにしか聞こえなかった。
「さて、初代理事長はどうしてこんな学園を設計したのでしょう…?」
広すぎる学園内。
外からでもそれなりに大きいと思っていたが、これ程までか…。
創立されたのが何百年前と言うこの学園は、引き継いだ代々の理事長達の好みで、何度も改装を繰り返している。
その好みはバラバラで、もうメルヘンと言うか…
兎に角、歪(いびつ)な空間を作り上げている。
「確か……この辺に校舎がある筈ですよね…」
外では絶対敬語。と言うかこのオタルックの時は絶対に敬語を崩さないように
心がけている雪羽は、独り言も敬語だ。
「……あれ…?」
(ここ…学校だよな…?)
疑問に思い首を傾げる。
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