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俺らの距離は、一定やった。
ただ、お互いの事を嫌い。
それだけで成り立っとった関係。
憎い程、嫌いやない、
好きやと思えるトコロも、ない、
ただ、嫌い。
それだけの事。
「目障りやから消えろや」
これが、最初の言葉。
偶然知った、ダチの浮気相手。
翔にはサトミが居る。
ソレを、この女は当然知っとった筈。
せやのに、
「教わらんかったん?自分がされて嫌な事は人にしたらあかんねんで?七香ちゃん」
サトミの彼氏である翔と、関係をもった女。
翔も最低やけど、この女も最低や!!
言う俺から逃げる様に俯く、まるで被害者気取り。
これだから嫌やねん。こーゆー女は。
「自分、加害者やねんから、被害者側になろうなんて甘い考えせんといてな?」
翔からの別れの言葉なんて、待たせんで?
サトミが気付く前に消えろ。
「加害者は加害者らしく、罪償えや」
誰かに責められて、傷つけられて、
ソレで自分の罪を償えるなんてのは、加害者の自己満足や。
自分で一生背負うんが罪の償い方やろ?
* * *
最初の会話から、半年。
監視目的で近付いた距離は、未だに継続中。
「いつまで見張ってる気?」
「あー?」
まぁ、半分は授業の関係、残りは七香へのイヤガラセみたいなモン。
「別に、今更、翔に近寄ったりしないわよ。私だって」
「…………へぇ」
やけど、会話は最初から見れば減った。
嫌いや言い合う事も前より少ななって、
ただ、七香の近くに居て、
自分でも、よぉ解らんくなってた。
「せやったら、イヤガラセ。ちゅう事で」
「イヤガラセ。ねぇ?」
言うた俺に、七香は興味無げに言葉を返す。
お互いに、イロイロな事が面倒やったんかもしらん。
「っ、ちょっと」
「あー」
その膝に頭を乗せても、重いんだけど?の一言で済まされる。
「眠い」
「…………ったく、」
愛情とは全く違う意味で、居心地は良かった。
何の遠慮も必要ないから、楽やった。
「壊れてる??私」
嫌いな男を膝枕する七香の呟き。
せやけど、壊れてるんは俺も同じ。
嫌いな女の側が、居心地がいい。
嫌気が差す程。
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