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「言う訳ないでしょ!学生のバイトでもあるまいし!!」
「……俺は本気や。七香が言うんやったら、」
「だから、言わないっての!!」
思わず上げた大声に、
でも、詠二は未だに真剣な表情で、やっぱりため息が漏れる。
何?
もしかして、コイツの方が傷深くない??
何でよ??
被害者は私なのよ!!
って言うか、アンタ誰よ?ってカンジ。
私の知ってる詠二って、こんな奴だっけ?
もっと、人を滅多切りにする奴じゃなかった??
「あのさ、同じ職場で働いていかなきゃならないんだから、少なくとも仕事中は忘れましょうよ。昔の事は」
「……七香は、それで平気なん?」
「5年も前の事でしょ?それに、私より詠二の方が辛そうだし?目の前から消えて貰うよりも、目の前で反省してる姿見てる方が楽しいじゃない」
言い切った私に、
「自分。その性質の悪さ、少しも変わってへんやん」
と返してきて、
ようやく知ってる詠二の姿に、少しだけ懐かしさを感じた。
でも、そっか。
殴られた方は当然痛いけど、殴った方も痛いもんね?
ソレと同じ?
や、違うか??
「とりあえず、その過剰な迄に私の前から消えようとするの、仕事中はやめてよね」
「……わか、った」
「仕事以外の時は、キレーに消え去ってくれて構わないから」
それでも、この人はシッカリと傷ついていて、
本当、どうかすると、私よりも引きずっていたのかもしれない。
「……ごめん」
「謝って済む事じゃないんでしょ?」
「ごめん」
だぁかぁらっっ!!
「詠二。あんた、ウザイ」
「っ、」
ホント、こんな奴だっけ?
大学時代は思った事を口にしあって、悪態ばっかついてたしなぁ。
そっか。
一緒に居る時間は長かったけど、知ろうとした事もないから、知らなかったのかも。
ま、別に知らないままで構わないんだけど。
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