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例えば、神様が居るとして。
その神様は、もしかしたら私を嫌いなんじゃないだろうか?
なんて、随分と昔にも思った事がある。
「大阪支社から来た、沢木詠二くんだ」
目の前に現れたその男に、私は完全にフリーズして、
私を見つけたその男も、同様のリアクションだった。
ってか、同じ会社に就職してたのかっっ!!
「席は、そこを使うといい」
そう言って課長が指差したのは、私の前の席。
眩暈がしそーだ。
「ちょっと七香!すっごいイイ男だと思わない」
「全然」
「えー?何よ、好みじゃない??」
「どっちかと言うと、嫌いだわ」
隣で同期の美樹たちが、嬉しそうに騒いでる。
そりゃ、まぁ。
顔がいいのは認めるけどね?
でも、
「……よろしく、お願いします」
私にとっては、二度と会いたく無かった相手。
多分、向こうにとっても。
悪く言えば、乱暴された相手で、した相手。
なんだから。
* * *
――5年前。
「目障りやから消えろや」
教室で資料を読む私に、そう降って来た声。
見上げたソコには、キレーな顔の男が立っていて、
「は??」
でも、全く面識のない男。
そんな人に突然、目障りと言われる覚えは無い。
「やから、目障りやから消えろ」
「と、言われましても、ドコへ??」
「自分、何の事言われてるんか解らんのか?」
いや。
普通、初対面の人間に目障りと言われる覚えは、ないでしょ?
「悪い事やって認識してへん。ちゅう事か」
「何が言いたいの?ってか、誰?」
聞いた私に、キレーな顔が笑う。
でも、目だけが笑ってない。
冷ややかなソレが、ひどく居心地悪かった。
「なら、こぉ言えば解るか?」
「……、」
「翔とサトミの友達やねん。俺」
っ!!
言われた名前に、血の気が引いた。
鉛の様に身体が重くなって、指先が冷たくなる。
「解ったやろ?消えろ」
聞こえる声に、ノイズがかかる。
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