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ふと、気配を感じて目を開ければ、
「っ、あ、」
至近距離に、慌てた顔の高橋くん。
居眠りしている間に、どうやら襲われそう?になってた様だけど、
「って!今、何時!?」
ふと時計を見れば、会議まで15分。
「あ、あの、」
「起こしてくれて、ありがとね!」
だから、私はソレには気付かなかったフリをして休憩室から逃げた。
危ない、危ない。
私って、隙あるのかな?
まさか会社で、後輩に寝込みを襲われかけるとは、ね。
ドラマみたーい。
「…………、」
「あれ?詠二」
休憩室を出れば、詠二が微妙な表情を浮かべて立っていて、
「何よ?」
「や、……起こしてくれて、ありがと!は、ちょっと可哀想やないか。と」
……見てたのか。
「仕様がないじゃない。思わせぶりな事できないもん」
「一緒に居ったら好きになるかもしれんやろ?」
「一緒に居たくらいで好きになるんだったら、世の中が両想いで溢れて大変ね?」
言う私に、苦い表情を浮かべる詠二は、きっと可愛くない女。とでも思ってるんだろう。
もっとも、可愛い。なんて思って頂かなくたって結構なんだけど。
「それに大学時代、私は半年以上アンタと一緒に居たけど?」
「……、」
「だから、そーゆー顔しない!でも、思い出してみなさいよ?好き。なんて感情、欠片も湧かなかったでしょ?」
見上げた私に、詠二は複雑な表情。
この泣きそうな、情けない表情を見るたびに罪悪感に似た気持ちになる。
だから、私が被害者なんだってば!!!
と、叫びたくなる。
* * *
少し長めの会議を終えて、就業時間間近。
「この脚立借りていーですか?」
「あぁ、どーぞ」
明日使うから。と先輩に頼まれた資料を探す。
ソレを見つけたら、今日のお仕事終了。
「よぉスカートで脚立にのぼるな?自分」
「見たら見料とるわよ」
制服のまま脚立にのぼる私に、詠二の呆れた様な声。
「……、ちょっ、鈴木さん!!その脚立、」
「え?」
ふと志保さんの声が響いて、
振り向こうとした途端、足許のバランスが崩れた。
「七香っ!!」
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