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『何となく分かった気がするわ。じゃあ、ちょっと待って。』
キリコが胸元に手を入れて何かゴソゴソしだした。
『これを渡しておくわね。』
何やら石の様なものが付いたペンダントらしい。ほんのり生温かいのが気になるが…いや、何でもない。
『その石を握って心の中で呼びかけてみて。おそらく、話ができるから。』
「おう。分かった。でもさ、もう会うことは出来ないのか?」
『あっ、そうそう。言うの忘れてたわ。願い事が終わったら、また新たなミッションが設定されるの。そのミッションをクリアした時にまた今みたいに願い事が一つ出来るわけ。これは、神さまに気に入られている間はずっと続くわ。要は、神さまが機嫌を損ねる様な悪い事をしなきゃいいのよ。』
「ちょ、ちょっといいか?ミッションて何?過酷な指令がくだされるのか?」
『違うわよ!何でいい事したご褒美に過酷なものが待ってんのよ!』
「そりゃそうだな。」
『例えばこういう事よ。宿題を忘れて先生に殴られたらクリアとか、鳥のフンを頭にくらったらクリアとか、日常的な事にミッションが隠されてるの。』
「日常的って…。何か嫌な想いをしないといけないのか…。」
『神さまも結構いたずら好きだからねぇ。』
「ってことは、その時にならないとキリコは現れないってこと?」
『そういうことになるわね。そっちの世界に行く方法なんて知らないもん。今もこのブラックアウトを使ってあんたと話してるだけだからね。』
「そうかぁ。まあ仕方ない。俺がどうにかしてミッションとやらを見つけだすさ。あっ、それと俺のこと京介って呼んでくれよ。友達であんたは無しだぞ。」
『しょうがないわね。分かったわ。私も普通の人間と友達だなんて初めてだから、たまにはこういうのもいいかもね。じゃ、またね。頑張りなさいよ!京介!』
やっぱ女の子に名前で呼ばれるのはいいよなぁ。何かもう付き合ってるぐらいの感じだよなぁ。
そんな事を思っている間にキリコはまた光となり、その光もやがて消えた。すると、
『痛てぇ~!!』
という悲鳴と共に、猛スピードで走り去る車。あっ、そうだ。登校中だった。しかも、遅刻中。俺は後頭部を手で押さえた、汗と涙が入り混じって訳が分からない生き物を尻目に、学校へ急……がなかった。
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