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さて、どうしたものか。
俺はペンを片手に持ちながら悩んでいた。
その問題点とは――
「わ、わからないよぉ……」
「未だにローマ字が書けないってどういうことだよ!」
テーブルを挟んで座っている義理の妹にそう叫んだ。もちろん中学生ではない。
俺たちは高校二年生だ。
それなのにローマ字が書けないという義妹に、俺は頭を悩ませていた。
「いいか、Gの次はHだ。Hの次は……」
「出産?」
「ちげーよ! Iだよ! いい加減覚えてくれよ……千尋……」
千尋はえへへ、と胸の前で手を合わせて笑った。
栗色の長い髪は所々跳ねており、頭にはアホ毛がアンテナのように一本立っている。
大きな瞳に幼さを残した顔立ちは、本当に高校生なのかと疑いたいほどだ。
「efettoだね」
「え……えっふぇーと?」
「イタリア語で出産なの」
「何でイタリア語はわかって英語は出来ないんだよ!」
「あい ふろぉーむ ちひろ」
「普通に違うから!」
頭を抱えて悩みたくなる。
義理の妹とは言え、なぜこうも性格が違ってしまったのだろうか。
我が妹、竹中千尋(たけなか ちひろ)は極度なまでの天然である。
挿し絵:ネリ♪様
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