8人が本棚に入れています
本棚に追加
背中に熱い視線を感じつつ、市を出て、里を後にする。
向かう先は、昨日も出向いたあの森。
果たしておっちゃんが言ってた事が本当なのか、直接聞き出してみなければ。
「さて、どうやって呼び出す?」
森に着いたはいいのだが、バルサ〇ンは前回捨ててしまってどこへ行ったか分からない。ていうか、使ったら嫌われる気がするから控えよう。
平和的に害を出さずにリグルを呼び出す方法……。
「んー、んー……ほいっと」
異次元ポケットから取り出したのは、装飾は金一色、直径は約60㎝、平べったい円の中心は外側に窪んでいる……俺のいた世界ではシンバルと呼ばれる物だ。
これを力の限り……
「鳴らしまくる!」
『シャーン!』と辺り一面に澄んだ音が響き渡るが、至近距離で鳴らす俺は聴覚に大ダメージ。グレイズ失敗。
そろそろ俺の聴覚が面白いことになりそうな頃、ようやくリグルが出てきた。
「う・る・さーい!」
「あん!? なんだって!?」
「うるさいって言ってるの!」
耳をギリギリと引っ張られ大声で喋られる。
「オーケー分かった! 少し待ってくれ!」
聴覚が回復するまで数分間、リグルは憮然とした表情で俺を見ていた。ていうか、睨まれてた。
「うっし、回復」
「……で、何か用?」
「話が早くて助かる。実はだな……」
俺が里での会話の内容をリグルに伝えると、顔をしかめっ面に歪めた。
「んー……分からないなぁ」
「そうかー……もし何かあったら教えてくれ。その時はコレで呼んでくれ」
「……何、これ」
「笛」
リグルに手渡した物は、犬笛ならぬ『俺笛』だ。吹くと俺にしか聞こえない周波数の音が出る。
「笛……ねぇ」
「落とすなよ? もう二度と作れないだろうから」
「はいはい……」
溜め息を吐き、俺笛をポケットにしまいこんだリグルは、用は済んだでしょうといった感じに踵を返し
「じゃあ私は帰るね。一応あんたの方でも調査してみてくれる?」
そう言った。
まぁ一応俺の方でも調査するけどもさ
「なぁ、リグルさんよ」
「なによ」
「名前で呼んでくれんか? 凄い淋しいんだが」
「別にいいけど、名前は?」
「晃太」
「コータね、分かった。じゃあね、コータ」
ひらひらと手を振り、リグルと別れる。
「はぁ……」
最初のコメントを投稿しよう!