~一日目~

4/6
前へ
/14ページ
次へ
  「うーん……面倒だなぁ」    あいつ……コータって言ってたっけ?  コータによれば、人里の畑が不作になったのは虫のせいらしい。  正確には、人里の人たちがそうだと決めつけているだけなんだけどね。   「はぁ……」    虫たちに昨日今日と連続して申し訳ないが、再び集まるよう念じる。  数分の後には私の目の前に壁が出来上がっていた。   「ちょっと訊いていい?」    私が尋ねると、返ってくる答えは『知らない』『やってない』と同じ答えばかり。  正直に答えているかと聞き返してみたけど、やはり同じ答えが返ってきた。   「んー、そっか」    虫たちにも何か情報があれば教えて欲しい旨を伝えて、解散する。  壁はあっという間にバラバラになり、後には私以外何も無い。   「一応今の、報告したほうがいいよね?」    ポケットから先ほど受け取った笛を取り出す。  5㎝程度の小さな笛だけど、ホントにこんな笛でコータは来るのかな……  半信半疑に思いつつ、笛を口に咥えて、思い切り吹く。   「うごあー! うるせー!」   「うっわぁ!?」    吹くと同時にコータが現れた。  笛から音が出た様子はなかったけど?   「そんなに強く吹かなくてもちゃんと聞こえるわ!」   「あ、うん……なんかゴメン」   「まぁそんなことはどうでもいい。で、何か分かったことでもあったか?」   「あ、そのことで呼んだんだ。虫たちもね、何も知らないって言ってた」   「……それだけのことで呼んだのか?」    気のせいだといいけど、コータから殺気を孕んだ怒気が凄く伝わってくる。  もしかして、もしかしなくても怒ってる?   「リグルてめぇ……ん? 待て、虫たちも知らないって言ったか?」    誰がいるわけでもないのに遺言を考えていると、唐突にコータからさっきまでの気配が消えた。  今日初めて、コータが怖いと思った。   「う、うん……畑は荒らしてないって……」   「その話が本当なら、何が原因で畑が? さっぱり分からん」    頭にクエスチョンマークでも浮かんでいるんじゃないかってくらいに、頭を捻ってうんうん唸っている。   「まぁいい、俺は引き続き里の方を調べる。虫の方はリグルに任せた」   「ん、分かった」  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加