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「うーん……面倒だなぁ」
あいつ……コータって言ってたっけ?
コータによれば、人里の畑が不作になったのは虫のせいらしい。
正確には、人里の人たちがそうだと決めつけているだけなんだけどね。
「はぁ……」
虫たちに昨日今日と連続して申し訳ないが、再び集まるよう念じる。
数分の後には私の目の前に壁が出来上がっていた。
「ちょっと訊いていい?」
私が尋ねると、返ってくる答えは『知らない』『やってない』と同じ答えばかり。
正直に答えているかと聞き返してみたけど、やはり同じ答えが返ってきた。
「んー、そっか」
虫たちにも何か情報があれば教えて欲しい旨を伝えて、解散する。
壁はあっという間にバラバラになり、後には私以外何も無い。
「一応今の、報告したほうがいいよね?」
ポケットから先ほど受け取った笛を取り出す。
5㎝程度の小さな笛だけど、ホントにこんな笛でコータは来るのかな……
半信半疑に思いつつ、笛を口に咥えて、思い切り吹く。
「うごあー! うるせー!」
「うっわぁ!?」
吹くと同時にコータが現れた。
笛から音が出た様子はなかったけど?
「そんなに強く吹かなくてもちゃんと聞こえるわ!」
「あ、うん……なんかゴメン」
「まぁそんなことはどうでもいい。で、何か分かったことでもあったか?」
「あ、そのことで呼んだんだ。虫たちもね、何も知らないって言ってた」
「……それだけのことで呼んだのか?」
気のせいだといいけど、コータから殺気を孕んだ怒気が凄く伝わってくる。
もしかして、もしかしなくても怒ってる?
「リグルてめぇ……ん? 待て、虫たちも知らないって言ったか?」
誰がいるわけでもないのに遺言を考えていると、唐突にコータからさっきまでの気配が消えた。
今日初めて、コータが怖いと思った。
「う、うん……畑は荒らしてないって……」
「その話が本当なら、何が原因で畑が? さっぱり分からん」
頭にクエスチョンマークでも浮かんでいるんじゃないかってくらいに、頭を捻ってうんうん唸っている。
「まぁいい、俺は引き続き里の方を調べる。虫の方はリグルに任せた」
「ん、分かった」
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