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しばらく歩いていると、左前方に明りが見えてきた。暖かそうな橙色の光だ。私は光源へ向かってまっすぐに歩いていった。
明りがもれていたのは、湖上に建っている小さなお堂のような建物で、湖との間に崩れかかった橋が架けられている。
私は骨のはみ出ている足を引きずりながら、必死の思いで橋を渡っていった。
建物の入り口にやってくると、私は青白い手を扉にけ、ゆっくりと開いた。
黒い板間の室内に人がいた。
小柄な少女だ。彼女は白い着物をつけ、黒塗りの床に横たわっている。色白の瓜実顔で、髪の長い少女だった。
室内の四方にはすえた臭いを放つ油が燃やされ、灯された小さな炎は、少女の姿を幻影のように照らし出していた。ゆっくりと足を踏み出し、ぎくしゃくとした動きで少女に近寄っていく。
炎に照らされて、壁にゆらゆらと巨大な悪鬼…私の影が揺れている。
私は、少女に手が触れる場所までくると彼女の姿をまじまじと眺めた。
明らかに少女は、私の侵入に気づいていない様子だた。どうやら眠っているようだ。小さな目は閉じられ、紅をさした唇はひき結ばれている。
まるで、少女は人身御供として差し出された乙女のようであった。そうすると、私の役回りは、彼女を食らう悪鬼なのだろうか。馬鹿げたことをと思いつつも、なぜかしらこの奇妙な言い回しが、この情景にぴったりとあてはまっている。
私は冗談半分、人間食らいの悪鬼よろしく、少女の着物の裾を開いてみた。微かな衣擦れの音をたてながら帯をとくと、はだけた着物のから彼女の裸体がのぞいた。
細長い手足だ。わずかにふくらんだ胸にきゃしゃな腰、うすい生え際の下で閉じられている可愛らしい合わせ目、形よくすらりと伸びた両脚。
何より印象的なのは、少女の白い肌だった。ぬばたまの黒髪の上にあるその肌は、一度も日光を浴びたことがないかのように白く、まるでミルクを薄膜で包みこんだかのようだ。
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