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つっと、少女の体に右手を伸ばす。
私の視界に、どす黒い紫に染まった爪と、骨に垂れ下がっている腐肉が入ってきた。そのおぞましさに、思わず伸ばしかけた手を引いてしう。
こらえきれない鳴咽が、震えとなって体から出てきた。
間違いない。段々と体が腐ってきているのだ。
再び少女に視線を移しているうちに、私の胸中にある思いが浮かんできた。
この少女を食らえば生き返ることができる…そんな動かしがたい妄執が私の脳裏を満たし始めた。
少女の右手に顔を近づけていく。
私が少女の指に舌を這わすと、その掌から震えがはしった。彼女の人差指の先端まで唇をすべらし、私はゆっくりと細い指を口に含んだ。
すると、蕩けるような感触と共に、甘い味覚が舌先を伝った。唇を離してみると、私が口に含んだ部分がなくなっている。骨や血管などといった、複雑な模様が見えるのかと思ったが、指の断面に見えているのは、薄いピンクに彩られた肉のような物体だった。私はその単調で鮮やかな断面に、セクシュアルな感慨を覚えた。
ふと、かゆみにも似た疼きをおぼえ、どうしたのだろうと視線を右手の方に向ける。
見ると、右手の人差指が白く変わっていた。それは見覚えのある懐かしい自分の指だった。
私は狂喜し、少女の体へ深々と顔をうずめていった。
私は憑かれたように少女を食べ続けた。
彼女の体が舌の上でとけていく。
綿菓子のようにやわらかく、そしてはかない体。その白い皮膚の下にある、甘い桜色の滋味が私の中へ入ってくる。右手、左手、手首、腕、肩。彼女を噛みしめるごとに、私は体を取り戻していった。
心臓が力強く鼓動しだし、肺が空気をもとめてあえぎ出す。血液が循環し、体に温もりがもどってくる。
気がついてみると、いつしか少女は頭部のみを残す姿となっていた。
私の体は酩酊したように熱く、そしてふらつき始めたが、少女を食いつくしたいという欲求が、私に不可思議な力を注ぎこんで体を動かしていた。
私は、少女の頭を抱えあげた。
軽くなく、かといって持つのがつらいわけでもない、二度と忘れられないような重みが両腕にかかってくる。
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