賢者と好奇心

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「まぁよい。此処から東に城が見えるじゃろう、セントリィン城じゃ。その城に行ってみるがいい。」 我は老人に礼を言い、不愉快な音を立てる戸に手をかけた。 「そうじゃ、赤目の小僧。日が落ちる前には街に着いた方が良かろう。城壁を越えられんくなるからの。」 戸を開け、空を見上げると日は既に傾いてきていた。 『重ね重ね申し訳ない。恩に着る。』 いくら人間の姿をしていても我は龍族。通りすがりの者に見られぬよう気を付けて進んでも街に着いた時にはまだ日は残っていた。 見上げると首が痛くなるほどの城壁を前に、我は新な問題に直面していた。 城壁の門には2人の門兵がいて、旅人の荷物のチェックを行っていた。武器が没収されている訳ではないので、行商の品を取り締まっているのだろう。大きな街、特に城下街ではよく有ることだ。 我は武器や荷物の類は持ち歩いていないので、後ろめたいことは無いのだが、今回はそれが問題だった。
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