賢者と好奇心

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我は荷物を持ち歩いていない。 食事はする必要がなく、着替えは魔術でどうにでもなる。 武器にいたっては己の身体以上の物などない。 故に何も持たず旅をしていた。 それは人にとっては異質。 不信感を与えて然るものだ。 賢者に会うという目的がある以上、トラブルは事前に回避したかった。 『仕方あるまい。』 我は門兵に見付からないよう、城壁に沿って歩く。 人の気配が無くなったのを見計らい、膝を折り曲げ、跳び上がった。 煉瓦造りの城壁は約10mといったところ。 その程度であれば人型でも跳び越えることは可能だ。 我は人外の跳躍など無かったようにフワリと城壁の上に着地した。 「き…貴様!何者だ!!」 声を掛けられ振り向いた先には、槍を構えた兵士が立っていた。 迂闊。 門兵がいるのだから、見張りがいてもおかしくない。 この兵士は我の姿を確認していたのだろう。 不審に思い、様子を伺っていたところで先程の跳躍。 今にも攻撃を仕掛けて来そうな勢いがある。 我は感覚を研ぎ澄ませ、周囲に別の人間が居ないか探る。 例え隠れていたとしても、龍の嗅覚は山の向こうの花の匂いを嗅ぎ分け、聴覚は鼠の心音を聞き付ける。 無論意識をすればの話だが。
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