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セントリィンに滞在して3日目。
いよいよ説法会は明日に迫った。
我は最早日課になっている美術鑑賞の為、朝からいつもの道を歩いていた。
ふと気付くと、我が美術館に向かう道からは人の話し声や仕事の作業音が全く聞こえなかった。
確かに人通りはメインストリートに比べると、少ない場所だが、1人も出歩いていないのは不自然だ。
聴覚を全開にしてみると、路地や建物の死角から、金属が擦れ合う音が聞こえた。
それも1つ2つではなく、百に届きそうな数だ。
“囲まれているな。”
我が動きを止め、警戒体制に入ると、全身を銀色の鎧に包んだ一団が我を中心に円を描くように囲んでしまった。
『如何な用立てか?こちらも予定がある。手短に説明して頂きたい。』
我が周りの甲冑の集団を見回しながら、声を大きくして尋ねると、真正面にいた一際大きな男が兜を取り、それに倣うように隣にいた男も顔を顕にする。
「あの赤い髪に赤い眼。間違いありません。」
恐らく最初に兜を取った男が隊長だろう。
横の男はいつぞや城壁の上で気絶させた兵士だった。
となれば説明は不要。
我を危険人物として捕えに来たのだ。
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