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煙が風に撒かれ、無数の壊れた甲冑が顕になる。
その甲冑を着込んだ兵士達は見事に山の様になっていた。
その中心には隊長の男。
皆がその男を守ろうとした結果だった。
もう誰も向かって来ないことを確認し、我は美術館へ通じる道を歩きだした。
美術館に入る直前に両手の痛みに気付き、疑問に思った。
見てみると、右手の小指の付け根と左の掌に赤く血の筋が出来ていた。
『…面白い。意志、感情で力の強さが変化するのも人間の能力か。』
隊長の男が付けた右の傷からは、使命感。
巨漢の兵士が付けた左の傷からは、憤怒。
相容れない感情での傷を見比べ、探求心が疼くのを止められなかった。
身体がたぎるのを止められず、静かに絵画を眺めることは出来なかった。
いつもは1日の大半を過ごす美術館を後にし、頭を冷やす為に街をぶらつくことにした。
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