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ゥウオォォォォォッ!!
この唸り声はスタン村の人間には日常。
気にしなければいい。
猛獣の巣をつつく必要はない。
だが、ただ一人。
幼い少女だけが声がする方角をただ見つめる。
もうすぐ7歳になるのだが、同じ歳頃の子供より少し小さな体。
肩口で切り揃えられた黒い髪を揺らし、茶色の瞳はいつもより少しだけ細められる。
「いったい誰があんなに大きな声で叫んでるの?」
村では誰でも知っている声の主。
「あれは龍の声だよ。」
近くで遊んでいた別の子供が答えるが、
「本当?誰かがないてるところを見たの?」
「………」
誰も答えられない。
その場にいる子供たちはもちろん、スタン村にいる誰もが龍の姿を見たことがなかった。
「私、誰がないてるのか見に行ってくる。」
少女は山吹色のワンピースをひらめかせて、東の洞窟へと駆けていった。
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