出会い

2/9
前へ
/305ページ
次へ
洞窟は薄暗く、幅は大人二人が並んでやっと歩けるかどうか。 しばらく進んで左に折れるとドームのように開けた場所になっている。 ドームの頂点は大きく穴が空いていて、晴れた日は光がドームを照らす。 日の光はそこに居るモノに当たって反射し、ドーム全体を真っ赤に色付かせていた。 それは龍の鱗。真紅に輝き、その一つ一つが宝石のよう。 真紅の鱗に覆われた身を横たえると、ドームの半分は龍の身体で埋められる。 龍は眼を閉じ、考える。 “今日もまた遠吠えをあげた。” “何故に我は天に向かい、叫んでおるのか?” “我は誰に呼び掛けておるのか?” 龍がこの洞窟に棲みだしたのは、おおよそ百年前のこと。 その頃から、龍は遠吠えをあげていた。 永い時間の流れによって、龍は遠吠えの『はじまり』を頭の中から失っていた。 故に龍は考える。 “我は何故……”
/305ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2831人が本棚に入れています
本棚に追加