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洞窟は薄暗く、幅は大人二人が並んでやっと歩けるかどうか。
しばらく進んで左に折れるとドームのように開けた場所になっている。
ドームの頂点は大きく穴が空いていて、晴れた日は光がドームを照らす。
日の光はそこに居るモノに当たって反射し、ドーム全体を真っ赤に色付かせていた。
それは龍の鱗。真紅に輝き、その一つ一つが宝石のよう。
真紅の鱗に覆われた身を横たえると、ドームの半分は龍の身体で埋められる。
龍は眼を閉じ、考える。
“今日もまた遠吠えをあげた。”
“何故に我は天に向かい、叫んでおるのか?”
“我は誰に呼び掛けておるのか?”
龍がこの洞窟に棲みだしたのは、おおよそ百年前のこと。
その頃から、龍は遠吠えをあげていた。
永い時間の流れによって、龍は遠吠えの『はじまり』を頭の中から失っていた。
故に龍は考える。
“我は何故……”
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