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「なんか・・・前にもこんなことあったよな」
「そうだっけ?」
わざと私は知らんぷりをする。
蝉しぐれが夏の終わりを告げる。
「もう夏休み終わっちゃうねー」
「今年はかざぐるま、あげれなくてごめんな」
「・・・覚えてたの?」
「当たり前だろー、あんなに喜んでたじゃん」
私が喜んでいたことを覚えていてくれた。
ただそれだけのことが、素直に嬉しかった。
「あ、葉っぱついてる」
たーくんの手が、そっと私の髪に触れる。
久しぶりの温かい感触だった。
私・・・たーくんが好き。
きっと今、私の頬は真っ赤だろう。
夕日が沈む前に帰らなきゃ。
この想いは自分だけのものにしなきゃだめだ・・・
「引退試合、頑張ってね」
「おう、ありがとな」
伸びたあなたの影に小さく手を振った。
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