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そして秋、冬が過ぎ、春がきた。
私の町は雪国だから、雪解けがとても遅い。
息を白くしながら卒業式を迎えた。
私は初めて袖を通した制服が嬉しくて、小学校から帰ると、すぐにたーくんの家に遊びに行った。
田舎だからチャイムなんて洒落たものはない。
「たーくーん!!」
私は玄関の戸を開けていつもどおりたーくんを大声で呼んだ。
数秒して、たーくんが降りてきた。
「あおい、うるせーよ・・・あ、今日卒業式かー」
「どう?似合ってる?」
「馬子にも衣装、だな。おめでと」
また夏よりも少し大きくなった手でぐしゃぐしゃ撫でた。
「貴樹、その子もしかしてあおいちゃん?」
“貴樹”
たーくんを呼び捨てで呼ぶきれいな声に私はびくっとなった。
階段の上から、かわいい、というよりきれいな女の子が顔をのぞかせた。
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