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部活に勉強に、たーくんのことを考える間もないくらいあっという間に夏になった。
夕日に照らされた田んぼの間を自転車で駆け抜けていると、大きな声で呼び止められた。
「あおい!」
久しぶりに聞いたその声は、少し低くなっていた。
「お前なー、そんな律儀にメットかぶんなくていいんだってー」
たーくんがにかっと笑う。
久しぶりに見た笑顔だった。
その鞄には由梨さん手作りのお守りが揺れていた。
中学校から離れていた私の地区はヘルメット着用で自転車通学が許可されていた。
「だって、先生に見つかったら怖いんだもん」
「大丈夫だってー、はずしちゃえはずしちゃえ」
たーくんに促され、私はおそるおそるヘルメットを取った。
「うわっ・・・めっちゃすずしー!気持ちいいー!」
「だろ?夕方は涼しいんだから、メット取らなきゃ損だってー」
「頭軽くなったから、こぎやすいー!たーくん競争しよ!」
「ちょ・・・待てって!」
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