決意

2/27
前へ
/348ページ
次へ
周瑜の足音だけが、不気味に室内に響いていく。 「……」 孝彦は周瑜を真っ直ぐ見つめ、黙り続けている。 「孝彦?おい。」 祥太は、周瑜が近づくたびに、孝彦の肩を叩いた。 「……」 周瑜も無言で孝彦達に近づいてくる。 「周瑜よ。」 突然、孝彦が周瑜に呼び掛けた。 「なんですか?孝彦さん。」 周瑜は、伯符ではなく、孝彦と呼んだ。もはや、自分達を孫策と曹丕と思っていないらしい。 「俺達を殺してどうする?」 「別に。ただ、本物と入れ替わっていた…とでも、言いますよ。」 「皆を納得させられるのか?」 「なら、曹丕が伯符を殺害したから、私が仇を討った。これで納得するでしょう。」 孝彦の質問に、表情を変えず丁寧に答えていく。 「なら、逆に問いましょう。貴殿方はこの時代に生きて、何をなされる?」 周瑜が訪ねてきた。 「本来なら、俺達の戦いが終われば現代に帰れるはずだった。しかし、帰れないのであれば、俺は孫策伯符として、周瑜と天下を目指す。」 「私と天下を?」 周瑜が剣を構えた。 「面白い冗談ですね。」 周瑜は笑いながら剣を高く上げた。 「孝彦!」 祥太が叫んだ瞬間に、周瑜の剣が孝彦に向かっていった。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

800人が本棚に入れています
本棚に追加