……それは突然に……

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何もない世界 世界と呼べるのかさえも曖昧な物 ただ深い、底の知れない漆黒だけがある空間ーー。 目を開いても何も見えないその空間 立っているのか それとも浮いているのか いや違う 多分そんなレベルの話しじゃない そう思い男は目を閉じた。 「俺……どうしたんだっけ……」 ポツリとそう呟くと男は急に歩み始めた 足に何とも言えない感触を感じつつ暗闇の中を進んで行く ふと何気なく辺りを見渡して見る 先程いた場所よりほんの10分程歩いただけだったはずだった だが、辺りを包む漆黒は一段と黒くなったような気がした。 「………………」 頭の中では止まらなくてはならない事が分かっているのだったが自らの足を止める事すら出来ない そして足元を見ると漆黒が足元を捉えており、うっすらとだが足首は既に取り込まれ始めていた。 (何だよ、これっ!?) そう言葉を発しようとした。 だが、口は動かず頭の中で思うだけであった。 本能的に危険だと感じた男は歩みを止めようとしたが彼の意志に反して前へ前へと進んでいく。 (まずい、このままじゃ……このままじゃ、なんだ……それと俺は……) ふと自分が何者か分からなっている事に気付いた男 だがそんな事に気付いても歩みは止まらない (……君) (なんだ……?) (……君、…………だよ) 徐々に漆黒が身体を捉え動く事さえも自由に出来なくなってくる そんな時、この暗闇の中から微かにだが誰かの声が聞こえた その声の主は見付からないが男には聞き覚えのある声だった。
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