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「あれ……朋華が助けてくれたのか……」
目を覚ました漆黒の世界
止まらない自分の足
それは
自分が生死の境をさ迷い死へと向かっていたからであったのだと和樹は思った
だから
自らの意思で深くなる漆黒の中へ向かう足が止められなかったのだ
そう思った。
「お父さん、急にお母さんの名前なんか出して……」
ようやく落ち着きを取り戻した彩乃がベッドに横たわってポツリと呟いた父親に声をかけてきた
和樹は彩乃の方に首だけを傾けると少しだけ思い出すような仕草をすると彩乃に向かい優しい表情をした。
「お父さん、死にかけた時にお母さんに助けてもらったんだよ」
「お母さんに?」
「あぁ、真っ暗闇の中で足が勝手に動いてどんどん進んで行ったんだ」
彩乃が聴き入っているのを見ると和樹は首を元に戻して一つマスクの中で深呼吸をすると再び口を開いた。
「その時な、小さな光が現れて朋華……お母さんが現れたんだ、すると足が止まったんだ」
「お父さん、そのまま行ってたら……」
「多分、死んでた」
軽く流すようにして言うと和樹は話しを戻した。
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