……彼方の君へ……

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右手に手桶 左手には彼女の大好きだった黄色の花束を握ってコンクリート製の階段の上がり最上段の彼女の所を目指していった。 そして最上段の最も見晴らしの良い角に和樹の最愛の人、朋華はいた。 「遅くなってごめん、今年は色々とあってさ」 手桶から杓を使いゆっくり水を掛けて持ってきた布で磨きながら昨日の事、悠二がプロサッカー選手になった事、彩乃が結婚して母親になる事を話した 嬉しそうに語りかけ彼女の名前の刻まれた墓石を研き上げていく和樹 そして最後にもう一度、清水を掛けて一通り拭うと立ち上がった。 「約束通り、悠二と彩乃自慢出来る位までに育てたよ、だからもう……朋華は心配しないでゆっくり休んでくれ……」 それぞれの道を歩み出した悠二と彩乃 去り際に朋華が心配した事、和樹はそれを見事にやり遂げた そしてそれはどこかで見ている朋華に向けた言葉であった。
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