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その時だった
ザアッと一陣の風が和樹の正面から駆け抜け左手に握っていた黄色い大きな花の数枚の花びらを空へと持っていた。
そして
和樹の目の前に彼女が姿を現したーー。
(ありがとう…二人共あんなに立派に育ててくれて)
「俺達の子供だ、いい子だったから何もしてない」
(和樹君らしい、ごめんね側にいられなくて……)
微かに和樹の瞳に写る朋華の姿
そしてその表情が僅かばかり曇った
1番迷惑をかけてそれに寂しい思いをさせた事
それが彼女の心を縛り付けていた。
その時だった
和樹は持っていた花束を花刺しに均等に入れた。
「向日葵の花言葉……『いつまでも君を思う』……俺はこれからも朋華だけを想ってるよ」
(もう、またそんな事言って……)
嬉しそうに微笑みながら和樹の元に歩み寄ってきた
そして和樹は昔と変わらなく彼女の肩を抱き寄せようとするがその手にはただ何の感触もなかった
もう朋華はいないと分かっていても抱き寄せる事すら出来ない事実が和樹を突き刺した。
しかし朋華はそれでも嬉しそうに和樹に寄り添った
そして一言
『ありがとう…』と呟くと朋華は和樹の元から離れた。
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