……彼方の君へ……

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(和樹君、もう行かなくちゃ……) 朋華の悲しそうなその声 だが 和樹の方は覚悟しておりただ一言 『あぁ、分かった』とだけ言い朋華に笑顔を向けた。 (和樹君はもう自分の為に生きて……私は貴方の笑顔が見たいから) 「今が俺の生き方だ、それはこれからも変わらない」 その時だった 先程のような強い風が吹きはじめた。 それが合図かのように朋華は暗い表情を浮かべ一筋の涙を頬に伝わらせた。 (私……和樹君のお嫁さんで幸せだった、悠二と彩乃のお母さんで幸せだった……和樹の、和樹君の側にいられて幸せでした……) ありったけの想いを投げ掛ける朋華 これが本当に最後の別れだと知っているから 伝えられる事、言いたい事の総てを和樹に伝えた そして 最後の言葉を紡ごうとしたがその言葉は和樹の抱擁により閉ざされた。 「ありがとう……朋華、これからもずっとずっと、君だけを愛してる」 (うん……) 「最後まで絶対に離さない、俺は側にいる」 (うん…) お互いに二度と温もりを感じられないはずだった だが、今は和樹の胸の中で幸せの涙を流しながら最後の時を迎えようとしている朋華。 そして 言葉では伝わらない想いの全てを和樹はその身を使って伝えていた。 そして 再び一陣の風が吹き、刺した向日葵の花びらを舞い上がらせる それが二人の別れの合図であったーー。
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