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僕はケンくんの携帯電話。僕がケンくんの所に来て、二ヶ月が経つ。そんな僕に保護されているメールがある。
『サユリです。メールありがとね。』
この短いメールはケンくんの大切な人、サユリちゃんからの初めてのメールだ。それは今から一週間前、一学期の終業式の日だった。ケンくんとサユリちゃんはクラスメート。でも高校に入って四ヶ月が経つのに、ケンくんはサユリちゃんとあまり話したことがなかった。ケンくんはとても照れ屋なのだ。そんなケンくんが勇気を出して、サユリちゃんに話掛けた。それはほんと何気ない世間話だった。それでもケンくんは嬉しそうだった。最後にケンくんはがんばった。
「あ、携帯教えてもらっていいかな?」
その声は少しうわずっていた。
「うん。いいよ。」
サユリちゃんは簡単にオーケーをくれた。そしてケンくんは僕をサユリちゃんの目の前に出した。僕を持つケンくんの手は汗でびっしょり。僕にしか分からなかったけど、少し震えていた。そこで僕にサユリさんの番号とメアドが登録された。その夜、ケンくんはさっそくサユリちゃんにメールを打った。
『ケンです。初メールしてみました。』
ケンくんは僕の顔を何回も見返して、送信ボタンを押した。それからケンくんは僕をしっかり握り、ずっと見つめていた。ケンくんの手が熱い。僕はまるでサウナに居るような気分で、少しのぼせそうだった。一時間ぐらい経った時、僕は大塚愛の『大好きだよ。』を歌った。ケンくんは僕を開いて、メールを確認する。それが保護されているサユリちゃんからの初メールだ。
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